
海洋散骨の流れを費用・注意点・遵守すべきマナーなどを踏まえて解説
2023/07/07
近年、お墓の維持が難しい、お墓を持ちたくないという考えから、海洋散骨を選択する方が増えています。
本記事では、海洋散骨の流れについて、費用や注意点、遵守すべきマナーなどを踏まえて解説します。海洋散骨を検討している方の疑問や不安を解消できる内容となっているため、ぜひ参考にしてみてください。
海洋散骨とは
海洋散骨とは、祭祀の目的をもって、粉末状にした故人の遺骨を海に散布する供養方法です。
一般的に火葬した遺骨はお墓に納骨しますが、近年では「大好きな海で眠りたい」「自然に還りたい」という故人の想いを尊重し、海洋散骨を選択する人も増えています。
海洋散骨の方法は、主に以下の2種類です。
・船舶上で行う方法
・ヘリコプターやセスナ機で沖合いまで飛び、空から撒く方法
海洋散骨に必要な手続き
散骨を直接禁止・規制する法律がないことから、散骨自体は違法ではありません。そのため、原則、海洋散骨にあたって公的機関からの許可や、自治体での行政手続きなどは不要です。
ただし、すでにお墓に納められている遺骨を取り出すとき、海洋散骨業者によっては、自治体発行の「改葬許可証」を求める場合があります。必要書類の有無については、あらかじめ海洋散骨業者に確認しましょう。
海洋散骨は「専門業者に依頼」が安心
海洋散骨は個人でも可能ですが、基本的には専門業者へ依頼したほうが安心です。
なぜなら、海洋散骨では以下のように複数の注意点が存在するからです。
・遺骨の粉砕(粉骨)
・船舶やクルーザーの操縦
・散骨可能なエリアの選定
・葬送に関する専門的な知識と技能
・散骨に関するマナーやルールの順守
・近隣住民や観光業者、漁業関係者などへの配慮
「どうしても個人で海洋散骨を行いたい」という場合は、厚生労働省の「散骨に関するガイドライン」や、後述する散骨のマナーやルールを把握しておきましょう。
海洋散骨を行う流れ【5ステップ】
海洋散骨の一般的な流れは、以下のとおりです。
・ステップ1:海洋散骨業者の選定
・ステップ2:問い合わせ・相談
・ステップ3:契約(ご遺骨を預ける)
・ステップ4:粉骨
・ステップ5:施行日の決定
各ステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ1:海洋散骨業者の選定
まずは、散骨を希望する海域やプラン、費用などを比較して、海洋散骨業者を選定します。
より幅広いニーズに応えられるのは、広い海域に対応し、その海域に精通した海洋散骨業者です。また、業界団体である日本海洋散骨協会の加盟事業者や、「海洋散骨アドバイザー」の資格保有者がいる業者であれば、最適なアドバイスやプランの提案など、より手厚いサポートが期待できます。
「費用が安いから」という理由で、安易に業者を決めてはいけません。「散骨可能な海域に対応している」「散骨実績が豊富で情報開示も適切」といった点をチェックし、複数の業者を比較したうえで決定しましょう。
ステップ2:問い合わせ・相談
海洋散骨業者を決めたら、電話やWebフォームから問い合わせます。
海洋散骨は、故人を見送る大切なセレモニーです。気持ちよく葬送するためにも、「この会社に任せたい」という気持ちになれる海洋散骨業者を選びたいものです。
問い合わせのタイミングで、対応の誠実さや丁寧さ、担当者の雰囲気などをチェックし、信頼できる業者かどうかを見極めましょう
ステップ3:契約(ご遺骨を預ける)
海洋散骨業者から提案されたプランや内容に納得できたら、契約に移ります。契約時は、申込書類を提出し、遺骨を預ける必要があります。遺骨を納めていた骨壺は、海洋散骨業者が引き取り、適切な方法で廃棄されることが一般的です。
さまざまな事情で都合がつかない方や、遠方で遺骨を持ち込めない方は「訪問引取」や「郵送」を通じて遺骨を預けられる可能性があるため、海洋散骨業者に相談しましょう。
ステップ4:粉骨
預けた遺骨は、海洋散骨業者が専用の機械でパウダー状に粉砕(粉骨)します。
遺骨は最終的に海に散布されるため、粉骨の際、農水産物や水質に影響を与えないよう、環境汚染対策用の薬剤を噴霧し、水溶性の袋に納められることが一般的です。
個人での粉骨も不可能ではありませんが、大切な故人の遺骨を砕くことに抵抗がある人も多いため、基本的には海洋散骨業者へ依頼するとよいでしょう。
ステップ5:施行日の決定
天候や散骨プランなどから、海洋散骨の施行日が決定されます。
海洋散骨は、天候や海上の状況、その他特別な事情によって、施行延期を余儀なくされることがあります。
天候自体は誰にもコントロールできないため、延期はやむを得ません。ただし、「延期したまま倒産した」「順延が続いているため、天候不良にもかかわらず無理やり施行した」といったケースもあるため、ご注意ください。
施行日を海洋散骨業者と決める際は、天候不良時の対応や延期した場合の対応について、前もって確認しておくと安心です。
海洋散骨の当日の流れ【4ステップ】
ここからは、海洋散骨の施行当日の流れを4つのステップで解説していきます。
海洋散骨の当日の流れは、以下のとおりです。
・ステップ1:指定場所に集合
・ステップ2:出航
・ステップ3:散骨
・ステップ4:帰航
ひとつずつ確認していきましょう。
ステップ1:指定場所に集合
海洋散骨の施行当日は、公共の桟橋やマリーナなどの指定場所に集合します。定刻どおりに出航するため、集合時間に遅れないようご注意ください。
参列者全員が指定場所に集合したら、船上での注意事項やセレモニーの流れなどが説明されます。不明点や疑問などがある場合は、その場で確認しましょう。
なお、近隣住民への配慮から、服装は喪服ではなく普段着が望ましいとされています。また、船上で転倒しないよう、ヒールの高い靴や滑りやすい靴は避け、動きやすい服装で参列しましょう。
ステップ2:出航
乗船する遺族が集まり、海上の安全が確認できたら出航します。
船酔いが心配な方は、前日に十分な睡眠をとり、乗船30分前を目安に酔い止め薬を服用しておくとよいでしょう。
ステップ3:散骨
散骨ポイントに到着したら、故人との思い出を振り返りつつ、船上から散骨します。献花や献酒、号鐘や黙祷などを行い、故人をお見送りします。
このとき、海に手向けるものは、海洋散骨業者に許可されたものだけにしましょう。自然に還らない人工物や貴金属、プラスチックやビニールなどは、海に撒くことが禁止されています。
ステップ4:帰港
無事に散骨を終えたら、港に帰り、解散します。散骨当日の出航から帰港までの所要時間は、約2時間です。
海洋散骨業者によっては、後日、年忌法要に散骨海域を巡るメモリアルクルーズの実施、散骨証明書の発行、記念アルバムの贈呈なども行なっています。
「月命日ごとに手を合わせたい」「散骨した証明を残したい」という方は、業者選びの際にサービス内容を確認しておきましょう。
海洋散骨にかかる費用
海洋散骨には、大きく次の3つの方法が存在します。
・チャーター散骨
・合同散骨
・代行散骨
それぞれの散骨方法の特徴や費用相場を詳しく見ていきましょう。
⇛海洋散骨の種類や費用相場についてはこちらの記事で詳しく解説しています
チャーター散骨
チャーター散骨は、遺族や親族など近親者のみで船舶・クルーザーをチャーターして行う散骨です。チャーター散骨の費用相場は20万円〜40万円です。
「家族だけでゆっくりと故人を見送りたい」という方におすすめの散骨方法といえます。
合同散骨
合同散骨は、複数の家族と合同で船舶・クルーザーをチャーターして行う散骨です。合同散骨の費用相場は10万円〜20万円です。
乗船可能人数に定員がありますが、チャーター散骨に比べて費用を抑えられるというメリットがあります。
代行散骨
代行散骨は、さまざまな事情で乗船できない遺族や親族に代わり、業者が行う散骨です。代行散骨の費用相場は5万円〜10万円です。
「故人を自然に還したいが、どうしても都合がつかない」という方におすすめの散骨方法といえます。
自分たちで故人を見送ることはできませんが、「チャーター散骨」や「合同散骨」に比べて費用を抑えられる点が特徴です。
海洋散骨を行う場合の注意点
海洋散骨は、思いがけないトラブルに巻き込まれたり、法律・条例違反になったりする恐れがあるため、適切な施行が求められます。
海洋散骨における注意点は、主に以下のとおりです。
・親族間でしっかりと話し合う
・自治体の条例を確認する
・マナーを守り節度をもって行う
ひとつずつ確認していきましょう。
親族間でしっかりと話し合う
海洋散骨で散布された遺骨は、二度と手元に戻りません。
「遺骨はお墓に納めるべきだ」と、散骨自体に否定的な考えを持つ方も一定数存在します。そのため、独断で散骨を決めるとトラブルに発展する可能性があります。
故人の遺志はもちろんですが、遺された家族や親族の意見・気持ちを確認し、「手元供養のために遺骨を残すか」「すべて散骨するか」といった点を納得いくまで話し合いましょう。
自治体の条例を確認する
海洋散骨を直接禁止・規制する法律は存在しませんが、一部の自治体では条例やガイドラインを設け、海洋散骨を禁止または制限しています。
一例として、熱海市と伊東市の指針を見ていきましょう。
【熱海市】
3.適用範囲
海洋散骨を行う事業者に適用する。
4.事業者の責務
(1)熱海市内の土地(初島含む。)から10キロメートル以上離れた海域で行うこと。
(2)海水浴やマリンレジャーのお客様の多い夏期における海洋散骨は控えること。
(3)焼骨をパウダー状にし、飛散させないため水溶性の袋へ入れて海面へ投下すること。
(4)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)を撒かないこと。
(5)事業を宣伝・広報する際に「熱海沖」、「初島沖」など「熱海」を連想する文言を使用しないこと。
(6)その他 1.はじめに(基本的な考え方)及び 2.目的を踏まえて、十分な配慮を行うこと。
(引用:熱海市海洋散骨事業ガイドライン |熱海市)
【伊東市】
3 適用範囲
海洋散骨を行う者及び事業者に適用する。
4 遵守を要請する事項
(1)伊東市内の陸地から6海里(約11.11㎞)以内の海域で散骨しないこと。
(2)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)をまかないこと。
(3)宣伝・広報に関し、「伊東沖」、「伊東市の地名」など、「伊東」を連想する文言を使用しないこと。
(4)その他「1目的及び2基本的な考え方」を踏まえて、十分な配慮をすること。
(引用:伊東市における海洋散骨に係る指針|伊東市)
自治体の条例の目的は、近隣住民への配慮や観光地のブランドイメージ保護、漁業関係者への風評被害を防ぐなど、さまざまです。
トラブルを避けるためにも、散骨を予定している地域の条例やガイドラインを事前にチェックしておきましょう。条例違反が心配な方は、プロの海洋散骨業者に依頼することをおすすめします。
マナーを守り節度をもって行う
海洋散骨は、大勢の人が訪れる海上で実施されるため、事情を知らない第三者に不快感を与える恐れがあります。
思いがけないトラブルに巻き込まれないよう、マナーを守り、節度をもって行いましょう。
海洋散骨で守るべきマナーとは
マナーや節度と一口に言っても、人により解釈は異なります。
そこで参考にしたいのが、厚生労働省が定める「散骨に関するガイドライン」です。ここからは、同ガイドラインのポイントを紹介していきます。
粉骨する
遺骨遺棄罪(刑法第190条)では、遺骨をそのまま遺棄することを禁止しています。
そのため海洋散骨では、遺骨を1mm〜2mm程度のパウダー状に細かく粉砕(粉骨)し、遺骨が遺骨であると判別できないようにする必要があります。
粉骨せずに散骨した場合、たとえ遺族や親族に葬送目的があったとしても、それを見た近隣住民は遺骨遺棄と判断してしまうかもしれません。
また、細かくすることで遺骨が外洋に流れやすく、自然に還りやすくなるというメリットもあります。
法の遵守や、周辺環境・近隣住民への配慮を欠かさないよう、適切な方法で粉骨を行いましょう。
火気を持ち込まない
ロウソクや線香を海洋散骨の場に持ち込むことは、厳禁とされています。
火気の持ち込みが厳禁とされる主な理由は、以下のとおりです。
・ロウソクや線香から出た化学物質や灰などが海に落ち、環境汚染につながるため
・クルーズ中に船上の物品や荷物に燃え移り、火災の危険性があるため
海洋散骨にかかわらず、多くの船舶・クルーザーでは、手荷物としての火気の持ち込みが禁止されています。持ち込みたい物品や備品などがある場合は、火気に該当するかどうかを、あらかじめ海洋散骨業者に確認しましょう。
副葬品は自然に還るものを選ぶ
骨の成分の多くはリン酸カルシウムであり、海洋汚染の原因にはなりません。海洋散骨で注意すべきは、副葬品(遺品)です。
以下の物品は、副葬品から除外する必要があります。
・金属
・ガラス
・ビニール
・プラスチック
・その他の人工物
「故人が大切にしていたアクセサリーを手向けたい」という気持ちは理解できますが、環境汚染や農水産物への影響を考慮し、副葬品は自然に還るものを選びましょう。
散骨場所や周囲へ配慮する
海洋散骨は、遺族や親族にとって、故人を見送る大切なセレモニーです。
しかし、散骨を見た一部の近隣住民が不快に思う可能性はゼロではありません。また、観光やレジャーが盛んな地域では、ブランドイメージが損なわれることを懸念する観光業者も存在するでしょう。
近隣住民や観光業者などとのトラブルを避けるためにも、周囲へ配慮した海洋散骨を心がける必要があります。
配慮すべきポイントは、主に以下の点です。
・服装:葬儀以外の目的で桟橋やマリーナなどを訪れる一般市民や近隣住民に配慮し、喪服は避け、平服で参列する
・時間帯:人の往来が多い朝夕の通勤・通学の時間帯、ランチタイムは避ける
・散骨場所:人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上のみで散骨する(避けるべきエリア:河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地、海岸・浜辺・防波堤、漁場・養殖場・航路、それらの近辺)
親族・遺族から許可を得る
親族・遺族のなかには、「手元に置いて供養したい」「先祖代々のお墓で一緒に眠らせてあげたい」と考える方もいるかもしれません。
一度散骨をすると、遺骨は手元に残りません。親族・遺族の許可を得ずに独断で散骨を行うと、「故人に手を合わせられなくて困る」「ご先祖様に失礼だ」と反感を買う可能性があります。
海洋散骨では、遺骨をすべて海に撒く必要はありません。一部を手元に残したり、お墓に納めたりすることも可能です。親族間の争いや不和といった事態を防ぐためにも、事前に親族・遺族の間で十分に話し合い、了承を得ておくことが大切です。
まとめ
本記事では、海洋散骨の流れについて、費用や注意点、遵守すべきマナーなどを踏まえて解説してきました。
海洋散骨は個人でも行えますが、散骨マナーを守らないとトラブルに発展する恐れがあります。トラブルなく適切な海洋散骨を実施したい場合は、信頼と実績のある海洋散骨業者に依頼することをおすすめします。
ブルーオーシャンセレモニーは、全国各地で数多くの海洋散骨を施行してきた海洋散骨業者です。年間600件以上の散骨実績がある経験豊富なスタッフが、一人ひとりのお客様を丁寧にサポートします。
海洋散骨業者をお探しの方や、海洋散骨をご検討中の方は、ぜひ一度ブルーオーシャンセレモニーにお問い合わせください。
【参考】