海洋散骨に問題点はある?守るべきマナーと散骨のメリット・デメリット

海洋散骨に問題点はある?守るべきマナーと散骨のメリット・デメリット

2023/07/07

お墓の後継者不足や、お墓の維持管理が困難になったという理由から、海洋散骨を検討する人が増えています。

しかし、海洋散骨はどこでも自由に行えるわけではなく、いくつか考慮すべき問題点があります。例えば、親族や近隣住民とのトラブル、地域の農水産物への風評被害を招くことなどです。いずれも適切なプロの散骨業者に依頼すれば解決できる問題ですが、最悪の場合、法律や条例に違反する恐れもあるため注意しましょう。

本記事では、海洋散骨における法的な問題点の有無、適切な散骨をするうえで守るべきマナー、散骨のメリットやデメリットなどについて解説します。

散骨とは

散骨とは、自然葬のひとつで、火葬後の遺骨をパウダー状にして、海や山などに散布する供養方法のことです。

散骨では、新しくお墓を建てたり、お墓を管理したりする必要がありません。お墓の後継者不足や経済的な負担を軽減できることから、現代のニーズに合った「新しい供養、墓じまいの形」として定着しています。

近年は特に海洋散骨が注目されている

海洋散骨とは、祭祀の目的をもって、パウダー状にした故人の遺骨を海に散布する供養方法です。

これまでは、火葬後にお墓へ納骨することが一般的でした。ところが最近では、「大好きな海で眠りたい」という故人の想いを尊重し、遺骨を海に還す海洋散骨を選択する方が増えています。

海洋散骨のメリット

海洋散骨のメリットは、主に以下の3つです。

・費用を抑えられる

・次世代に負担がかからない

・環境への負荷が少ない

ひとつずつ見ていきましょう。

費用を抑えられる

株式会社鎌倉新書が実施した「お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、お墓の平均購入価格は、一般墓が152.4万円、樹木葬が66.9万円、納骨堂が77.6万円です。

一方、海洋散骨の費用相場は5万円〜40万円です。他の方法と比べると、海洋散骨が最も費用を抑えられる供養方法だといえます。

また、お墓を購入する場合、購入費用に加えて、メンテナンス費用やお墓の管理者に納める管理費が追加で発生します。しかし、海洋散骨では散骨施行時の費用のみ発生し、それ以外のメンテナンス費用や管理費はかかりません。

次世代に負担がかからない

海洋散骨が選ばれる主な理由に、「お墓の後継者がいない」「子や孫などの次世代に負担や手間をかけたくない」といったものがあります。

海洋散骨ではお墓を作らないため、後継者を必要とせず、お墓のメンテナンスや管理費の面で子や孫に負担をかけることもありません。

遺された家族に経済的な負担や手間をかけさせたくない場合に、検討しておきたい供養方法といえるでしょう。

環境への負荷が少ない

海洋散骨は、故人を自然に還すという意味合いから、「自然葬」とも呼ばれています。海洋散骨が生まれた文化的背景には、自然から生まれた人間を自然の循環に還す、というコンセプトがあります。

パウダー状に砕いた遺骨を海に散布するため、お墓を作る必要がありません。野山を開拓しお墓を建てる霊園や墓地、都心に建つビル型の納骨堂などに比べて、地球環境に優しい供養方法といえます。

海洋散骨のデメリット

海洋散骨の主なデメリットとして、以下が挙げられます。

・遺骨が手元に残らない

・お墓参りが難しい

・親族間トラブルが起こることもある

詳しく見ていきましょう。

遺骨が手元に残らない

海洋散骨では、遺骨をパウダー状に砕いて海に散布するため、遺骨が手元に残りません。

ただし、遺骨をすべて散布する必要はなく、遺骨の一部を手元に残して手元供養をする人や、納骨と散骨を一緒に行う人もいます。また、遺骨そのものを加工してアクセサリーに収容することや、宝石のようなカタチに整えて保管することも可能です。

親族のなかには「お墓参りができないのは困る」「散骨せずにお墓を建てたい」という意見を持つ方もいることでしょう。すべて散骨するのか、一部を手元に残すのかを親族間でよく話し合うことが、トラブルを回避するうえで大切です。

お墓参りが難しい

海洋散骨はお墓を持たない供養方法であるため、命日やお盆にお墓参りや献花ができない、というデメリットがあります。

ただし、海洋散骨で遺骨をすべて散布する必要はありません。故人を近くに感じたい人のなかには、遺骨の一部を残し、お手元で供養する「手元供養」を選ぶ人もいます。

また、散骨業者によっては、年忌法要の際に散骨した海域に再びお参りする「メモリアルクルーズ」を提供しています。

「どうしても月命日に手を合わせたい」という場合は、「メモリアルクルーズ」の利用を検討してみましょう。

親族間トラブルが起こることもある

お墓に対する価値観や、散骨に対する考えは人それぞれです。

海洋散骨が故人の希望だったとしても、親族のなかには抵抗感を抱く方もいることでしょう。先祖代々引き継いできたお墓がある場合は、「ご先祖様に失礼だ」という意見が出てきても不思議ではありません。

そのため、散骨をめぐっては、しばしば親族間でのトラブルに発展することがあります。トラブルを避けるためには、親族間で十分に話し合い、全員が納得したうえで散骨することが大切です。

海洋散骨の種類と費用相場

海洋散骨には、主に次の3種類があります。

・チャーター散骨

・合同散骨

・代行散骨

ここからは、それぞれの散骨方法の特徴や費用相場を解説していきます。

チャーター散骨

チャーター散骨は、「遺族や親族など近親者のみで船舶・クルーザーをチャーターして行う散骨」です。

チャーター散骨の費用相場は20万円〜40万円です。チャーター散骨の特徴は以下のとおりです。

・定員内であれば参加人数に制限がない 

・散骨エリアの希望やセレモニーの演出などの融通が利きやすい 

・近親者のみで故人との思い出を振り返り、大切なお別れのときを心ゆくまで過ごせる

「家族だけでゆっくり故人を見送りたい」という場合に、特におすすめの散骨方法です。

合同散骨

合同散骨は、「複数の家族と合同で船舶・クルーザーをチャーターして行う散骨」です。

合同散骨の費用相場は10万円〜20万円と言われています。合同散骨の特徴は以下のとおりです。

・日程や散骨エリアが限定されている 

・乗船可能人数に「1家族あたり◯人まで」という定員がある 

合同散骨では、船舶・クルーザーのチャーター代を複数の家族で負担するため、チャーター散骨より費用を抑えられます。

代行散骨

さまざまな事情で乗船できない遺族や親族に代わり、業者が代理で行う散骨を「代行散骨」と言います。

代行散骨の費用相場は5万円〜10万円です。一般的に、代行散骨には以下のサービスが含まれています。

・散骨している様子の写真撮影(オプションで写真を購入できるケースも)

・散骨エリア、日時などを証明する散骨証明書の発行 

自分たちで故人を見送ることはできませんが、「チャーター散骨」や「合同散骨」に比べて費用を抑えられます。「故人を海に還したいけれど、どうしても都合がつかない」という方におすすめの散骨方法です。

海洋散骨に法的な問題点はある?

海洋散骨は、節度をもって葬送の目的で適切に実施する限り、法的な問題点はありません。

ここからは、海洋散骨に法的な問題点がない理由を、根拠となる法律や法務省の見解に基づいて解説します。

海洋散骨のルールやマナーについては、以下の記事で詳しく解説しています。

⇛海洋散骨に許可は必要?知っておきたいルールやマナーを紹介

散骨は埋葬にあたらない

葬儀・葬式・埋葬に関して定めた法律が「墓地、埋葬等に関する法律」です(以下、墓地埋葬法)。

墓地埋葬法には「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。しかし、同法には散骨に関する規定はありません。

散骨はそもそも埋葬ではなく、遺骨を撒くという葬送方法のひとつです。そのため、「墓地埋葬法には抵触しない」と解釈されています。

また、東京都保健福祉局は、散骨に関して公式サイト上で次のように回答しています。

海や山に焼骨(遺灰)を撒く、いわゆる「散骨」について、国は、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」との見解を示しています。

(引用:散骨に関する留意事項|東京都保健福祉局

このように、葬送方法のひとつとして浸透しつつある散骨を、直接禁止する法律や規定はないものと判断できます。

遺骨遺棄罪(刑法第190条)に該当しない

刑法第190条は、遺骨遺棄罪について以下のとおり定めています。

(死体損壊等)

第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

(引用:刑法第190条|e-Gov法令検索

要約すると、遺骨を物理的に損壊し遺棄することは遺骨遺棄罪にあたる、ということです。

海洋散骨では、遺骨をパウダー状に細かく粉砕(粉骨)し、海に散布します。ただし、粉骨の目的は、遺骨を軽々しく扱うことや廃棄ではなく、あくまでも海洋散骨の準備です。この場合の粉骨は、遺骨の損壊に該当しないものと考えられています。

また、法務省でも「葬送を目的とし節度をもって行われる限り、刑法の遺骨遺棄罪にはあたらず問題はない」という見解を示しています。

以上の理由から、海洋散骨は「節度をもって行われる限り」法的な問題点はなく、自由に実施可能です。

自治体によっては条例が存在する

ここまで説明したとおり、海洋散骨を含めて、散骨を直接禁止する法律や規定はありません。

ただし、自治体によっては、近隣住民とのトラブル防止や、観光業や漁業に対する風評被害を防ぐことを目的に、散骨を禁止・規制する条例やガイドラインを設けています。

参考までに、熱海市と伊東市のガイドラインを一部紹介します。

【熱海市】

3.適用範囲

海洋散骨を行う事業者に適用する。

4.事業者の責務

(1)熱海市内の土地(初島含む。)から10キロメートル以上離れた海域で行うこと。

(2)海水浴やマリンレジャーのお客様の多い夏期における海洋散骨は控えること。

(3)焼骨をパウダー状にし、飛散させないため水溶性の袋へ入れて海面へ投下すること。

(4)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)を撒かないこと。

(5)事業を宣伝・広報する際に「熱海沖」、「初島沖」など「熱海」を連想する文言を使用しないこと。

(6)その他 1.はじめに(基本的な考え方)及び 2.目的を踏まえて、十分な配慮を行うこと。

(引用:熱海市海洋散骨事業ガイドライン |熱海市

【伊東市】

3 適用範囲

 海洋散骨を行う者及び事業者に適用する。

4 遵守を要請する事項

(1)伊東市内の陸地から6海里(約11.11㎞)以内の海域で散骨しないこと。

(2)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)をまかないこと。

(3)宣伝・広報に関し、「伊東沖」、「伊東市の地名」など、「伊東」を連想する文言を使用しないこと。

(4)その他「1目的及び2基本的な考え方」を踏まえて、十分な配慮をすること。

(引用:伊東市における海洋散骨に係る指針|伊東市

近隣住民や観光業・漁業関係者とのトラブルを避け、適切な散骨を行うためには、信頼できるプロの散骨業者に依頼することをおすすめします。

海洋散骨する際に守るべきマナー

海洋散骨に法的な問題点はありませんが、近隣住民や観光業・漁業関係者とのトラブルを避けるためにも、守るべきルールやマナーがあります

そこで参考にしたいのが、厚生労働省が制定した「散骨に関するガイドライン」と、日本海洋散骨協会が策定した「日本海洋散骨協会ガイドライン」です。

2つのガイドラインの重要なポイントを、それぞれ解説していきます。

粉骨する

遺骨遺棄罪(刑法第190条)で説明したとおり、遺骨をそのまま遺棄することは、法律違反にあたります。

そのため、海洋散骨では、散骨する遺骨は1mm〜2mm程度のパウダー状に粉砕し、遺骨が遺骨だと判別できないようにする必要があります

粉骨せずに散骨すると、遺族や親族にとっては葬送目的であったとしても、一般市民や近隣住民には遺骨遺棄との区別がつきません。

宗教的感情を害するものとしてトラブルの原因となるだけでなく、「節度をもって行われる限り問題はない」という法務省の見解にも反することになるため、粉骨は欠かさず行う必要があります。

火気を持ち込まない

海洋散骨では、環境への配慮やクルーズ巡航中の危険回避のために、火気の持ち込みが禁止されています。

火気を使用したときに出る灰や有害物質が海に落ちたり、ライターの火が船舶・クルーザー上の物品に燃え移ったりする危険性があるためです。

お墓参りや納骨、法要などではロウソクやお焼香を持ち込むことが一般的です。しかし、海洋散骨においては、散骨場所に火気を持ち込まないようにしましょう。

副葬品は自然に還るものを選ぶ

海洋散骨では、遺骨と一緒に副葬品を海に散布するため、副葬品は自然に還るものだけを選ぶ必要があります。

副葬品とは、故人の愛用品や、遺された方から故人へ手向けるために一緒に埋葬する品々のことです。

次のような物は自然に還らないため、副葬品から除外する必要があります。

・金属

・ガラス

・ビニール

・プラスチック

・その他の人工物

環境への配慮として、人工物や環境汚染、水質汚濁などの恐れがあるものは副葬品に選ばないようにしましょう。

散骨場所や周囲へ配慮する

海洋散骨は、故人の冥福を祈り、故人を見送る大切なセレモニーです。

しかし、海洋散骨を見た一部の近隣住民が不快に思う可能性もゼロではありません。また、風評被害を危惧する観光業・漁業関係者などとトラブルに発展する恐れもあります。

トラブルを避けるためにも、周囲へ配慮した海洋散骨を心がけましょう。

配慮すべきポイントは、主に以下の点です。

・服装:葬儀以外の目的で桟橋やマリーナなどを訪れる一般市民や近隣住民に配慮し、喪服は避け、平服で参列する

・時間帯:人の往来が多い朝夕の通勤・通学の時間帯、ランチタイムは避ける

・散骨場所:人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上のみで散骨する(避けるべきエリア:河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地、海岸・浜辺・防波堤、漁場・養殖場・航路、それらの近辺)

親族・遺族から許可を得る

親族・遺族のなかには、「故人を近くで感じていたい」「手元で供養したい」という方がいるかもしれません。

一度海洋散骨をすれば、遺骨は手元に残らず、二度と戻りません。親族・遺族の合意や許可を得ずに散骨してしまうと、のちのちトラブルに発展する恐れがあります。

そうならないためにも、独断で進めるのではなく、事前に親族・遺族の間で十分に話し合い、了承を得ておくことが大切です。

まとめ

本記事では、海洋散骨にまつわる法的な問題の有無、散骨で守るべきマナーやメリット・デメリットについて解説してきました。

海洋散骨には「節度をもって行う限り」法的な問題はありません。ただし、周囲への配慮を欠き、ルールやマナーを守らない場合、法律違反やトラブルになる恐れがあります。

「適切な海洋散骨を行い、故人を見送りたい」という方は、信頼と実績のある海洋散骨業者に依頼することをおすすめします。

ブルーオーシャンセレモニーは、16年で4千件以上の海洋散骨の施行実績を持ち、多くのお客様との信頼を積み重ねてきた海洋散骨業者です。

経験豊富な散骨コーディネーターが、お客様の声に耳を傾け、最適なプランをご提案します。海洋散骨業者をお探しの場合は、ぜひ一度ブルーオーシャンセレモニーにお問い合わせください。

 

【参考】

【第14回】お墓の消費者全国実態調査(2023年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向|株式会社鎌倉新書

熱海市海洋散骨事業ガイドライン |熱海市

伊東市における海洋散骨に係る指針|伊東市

散骨に関するガイドライン|厚生労働省

日本海洋散骨協会ガイドライン|日本海洋散骨協会

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