海洋散骨に許可は必要?知っておきたいルールやマナーを紹介

海洋散骨に許可は必要?知っておきたいルールやマナーを紹介

2023/05/31

近年、遺骨を海に散布する海洋散骨が「新しい供養、墓じまいの形」として注目されています。

しかし、海洋散骨に関心はあるものの、「散骨は法律に抵触しないの?」「どのような許可が必要?」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか

そこで本記事では、海洋散骨を実施するうえで覚えておきたいルールやマナーについて紹介します。

海洋散骨とは

海洋散骨とは、祭祀の目的をもって、粉末状にした故人の遺骨を海に散布する供養方法です

火葬した遺骨はお墓に納骨することが一般的ですが、最近では「大好きな海で眠りたい」という故人の想いを尊重し、遺骨を海に散布する海洋散骨を選択する人も増えています。

基本的に海洋散骨に許可は必要ない

現在、散骨を直接規制する法律や規定はないため、散骨自体は違法ではありません。そのため、基本的には海洋散骨にあたって公的機関から許可を得るための手続きや申請は不要です。

ただし、特定の条件に該当する場合は、公的機関や行政機関への手続きや申請が必要になるケースもあります。

特に「墓じまい」と「自治体による条例・ガイドライン」には注意が必要です

墓じまいには許可が必要なことも

お墓に納められていた故人の遺骨を取り出して散骨する場合、墓じまいをする必要があります。墓じまいとは、お墓を解体・撤去し、墓地を更地にして管理者に返還することです。

自治体によっては、墓じまいで遺骨を取り出すために「改葬許可申請」が必要になることがあります。改葬許可申請とは、お墓を別の場所に移すための手続きです。申請が受理されると「改葬許可証」が発行されます。

散骨は改葬にはあたりません。ただし、遺骨の身元を確認する目的で、改葬許可証の提出を求める海洋散骨業者も多く見受けられます。そのため、墓じまいをしたあとに遺骨を散骨する予定の場合は、事前に自治体や散骨業者へ確認するよう心がけましょう。

自治体によっては条例が存在する

海洋散骨を含めて、散骨を直接規制する法律や規制はありません。

ただし、自治体によっては散骨を禁止・規制する条例やガイドラインを制定していることがあるため、注意が必要です

参考までに、熱海市と伊東市のガイドラインを一部紹介します。

【熱海市】

3.適用範囲

海洋散骨を行う事業者に適用する。

4.事業者の責務

(1)熱海市内の土地(初島含む。)から10キロメートル以上離れた海域で行うこと。

(2)海水浴やマリンレジャーのお客様の多い夏期における海洋散骨は控えること。

(3)焼骨をパウダー状にし、飛散させないため水溶性の袋へ入れて海面へ投下すること。

(4)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)を撒かないこと。

(5)事業を宣伝・広報する際に「熱海沖」、「初島沖」など「熱海」を連想する文言を使用しないこと。

(6)その他 1.はじめに(基本的な考え方)及び 2.目的を踏まえて、十分な配慮を行うこと。

(引用:熱海市海洋散骨事業ガイドライン |熱海市

 

【伊東市】

3 適用範囲

 海洋散骨を行う者及び事業者に適用する。

4 遵守を要請する事項

(1)伊東市内の陸地から6海里(約11.11㎞)以内の海域で散骨しないこと。

(2)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)をまかないこと。

(3)宣伝・広報に関し、「伊東沖」、「伊東市の地名」など、「伊東」を連想する文言を使用しないこと。

(4)その他「1目的及び2基本的な考え方」を踏まえて、十分な配慮をすること。

(引用:伊東市における海洋散骨に係る指針|伊東市

 

これらのガイドラインは、一般市民や近隣住民とのトラブル防止や、観光地のイメージを守ることなどを目的に制定されています。

トラブルを避けるためにも、散骨を予定している地域の条例やガイドラインを事前にチェックしておきましょう。

海洋散骨に許可が不要な理由

海洋散骨は、遺骨を散布する行為です。「どうして法律上の規定がないのか」と不思議に思う方も多いでしょう。

海洋散骨に許可が不要な理由は、主に2つあります。

・散骨は埋葬にあたらない

・遺骨遺棄罪(刑法第190条)に該当しない

ひとつずつ見ていきましょう。

散骨は埋葬にあたらない

埋葬に関する法律として「墓地、埋葬等に関する法律」があります。この法律は、葬儀・葬式・埋葬に関して定めた法律です(以下、墓地埋葬法)。

墓地埋葬法には「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。しかし、条文には散骨に関する言及はありません。

散骨は、そもそも埋葬ではなく、遺骨を撒く葬送方法のひとつです。そのため、「墓地埋葬法には抵触しない」と解釈されています

また、東京都保健福祉局では、散骨に関して公式サイト上で以下のように回答しています。

海や山に焼骨(遺灰)を撒く、いわゆる「散骨」について、国は、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」との見解を示しています。

(引用:散骨に関する留意事項|東京都保健福祉局

 

このように、葬送のひとつとして浸透しつつある散骨に関しては、禁止する法律や規定がないものと判断できます。

遺骨遺棄罪(刑法第190条)に該当しない

遺骨遺棄罪について、刑法第190条では以下のとおり定めています。

(死体損壊等)

第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

(引用:刑法第190条|e-Gov法令検索

 

簡潔に言えば、遺骨を物理的に損壊し遺棄すると、遺骨遺棄罪にあたるということです。

海洋散骨では、遺骨をパウダー状に細かく粉砕(粉骨)し、海洋上に散布します。ただし、粉骨は、遺骨を軽々しく扱ったり廃棄したりすることが目的ではありません。そのため、海洋散骨の準備として行う粉骨は、遺骨の損壊に該当しないものと考えられています。

また、法務省でも「葬送を目的とし節度をもって行われる限り、刑法の遺骨遺棄罪にはあたらず問題はない」という見解を示しています。

以上の理由から、海洋散骨は「節度をもって行われる限り」自由に実施可能です。法律違反にはあたらず、特別な許可も必要ありません

海洋散骨を実施するにあたり守るべき「散骨に関するガイドラインなどの内容

基本的に許可や公的な手続きは必要ないものの、海洋散骨ではトラブルを避けるために守るべきルールやマナーがあります。

そこで参考にしたいのが、厚生労働省が制定した「散骨に関するガイドライン」と日本海洋散骨協会が策定した「日本海洋散骨協会ガイドライン」です。

適切な散骨方法を理解するためにも、「散骨に関するガイドライン」と「日本海洋散骨協会ガイドライン」の内容を整理しながら、ひとつずつ確認していきましょう。

粉骨する

遺骨遺棄罪(刑法第190条)で説明したとおり、遺骨をそのまま遺棄すると法律違反にあたります。

そのため、海洋散骨では、散骨する遺骨は1mm〜2mm程度のパウダー状に細かく粉砕し、遺骨が遺骨だと判別できないようにする必要があります

遺骨を粉骨せずに散骨した場合、遺族や親族にとっては葬送目的であったとしても、一般市民や近隣住民には遺棄との見分けがつきません。

宗教的感情を害するものとしてトラブルの原因となるだけでなく、「節度をもって行われる限り問題はない」という法務省の見解にも反することになるため、粉骨は必ず行なう必要があります。

火気を持ち込まない

お墓参りや納骨時には、ロウソクやお焼香を持ち込むことが一般的です。

しかし、海洋散骨で火気は厳禁とされています。ロウソクなどを使用したときに出る化学物質が海に落ちたり、船舶・クルーザー上の物品に燃え移ったりする危険性があるためです。

海洋散骨においては、散骨場所に火気を持ち込まないようにしましょう

副葬品は自然に還るものを選ぶ

副葬品とは、故人の愛用品や、遺された方から故人へ手向けるために一緒に埋葬する品々のことです。

海洋散骨の場合、副葬品は遺骨と一緒に海へ散布するため、自然に還るものだけを選ぶ必要があります

次のような物は自然に還らないため、副葬品から除外しましょう。

・金属

・ガラス

・ビニール

・プラスチック

・その他の人工物

自然に還らないものを副葬品として散布すると、海洋汚染につながります。海岸に流れ着いたとき、近隣住民からクレームを受ける恐れもあります。「どうしても副葬品を海に手向けたい」という場合は、自然に還るものを選ぶよう心がけましょう。

散骨場所や周囲へ配慮する

海洋散骨は、故人を見送る大切なセレモニーです。しかし、海洋散骨を見た一部の近隣住民が不快に思う可能性もゼロではありません。トラブルを避けるためにも、周囲へ配慮した海洋散骨を心がける必要があります。

配慮すべきポイントは、主に以下の点です。

・服装:葬儀以外の目的で桟橋やマリーナなどを訪れる一般市民や近隣住民に配慮し、喪服は避け、平服で参列する

・時間帯:人の往来が多い朝夕の通勤・通学の時間帯、ランチタイムは避ける

・散骨場所:人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上のみで散骨する(避けるべきエリア:河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地、海岸・浜辺・防波堤、漁場・養殖場・航路、それらの近辺)

親族・遺族からの許可を得る

親族・遺族のなかには「故人を近くで感じていたい」「手元に置いて供養したい」という方もいるかもしれません。

すべての遺骨を散骨してしまうと、遺骨は手元に残りません。親族・遺族の合意を得ずに散骨してしまうと、「なぜ勝手なことをしたのか」と反感を買う可能性もあるでしょう。

そうならないためにも、事前に親族・遺族の間で十分に話し合い、了承を得ておくことが大切です

まとめ

本記事では、海洋散骨にまつわるルールやマナーについて解説してきました。

海洋散骨は原則許可が不要で、「節度をもって行う限り」自由に行えるものです。ただし、散骨場所や環境・周囲への配慮を怠ると、トラブルに発展する恐れがあります。

適切な散骨方法を確認したい場合は、自治体のルールや厚生労働省の「散骨に関するガイドライン」、日本海洋散骨協会日本海洋散骨協会ガイドライン」をチェックしましょう。

ブルーオーシャンセレモニーは、日本海洋散骨協会の加盟事業者でもある海洋散骨会社です。16年で4千件以上の海洋散骨の施行実績を持ち、多くのお客様と信頼を積み重ねてきました。

信頼と実績を兼ね備えた海洋散骨業者をお探しの場合は、ぜひ一度ブルーオーシャンセレモニーにお問い合わせください。

 

【参考】

散骨に関するガイドライン|厚生労働省

日本海洋散骨協会ガイドライン|日本海洋散骨協会

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