
ニュースレター vol.3|海洋散骨したら「お盆」はどう過ごす?
2024/07/26
宗教観にとらわれない
故人に「また会える」海洋散骨という方法
当社は、日本における葬送の現状、課題および当社の取り組みなどを紹介する「Newsletter」を発行しています。第3回目は、「海洋散骨したら「お盆」はどう過ごす?」をテーマに、海洋散骨後に故人を偲ぶ方法を、海洋散骨を体験した人が語る実際のエピソードを交えてお届けします。
お盆はご先祖様をお迎えし向き合うための期間
一般にお盆とは、浄土から帰ってくるご先祖様の霊をお迎えする行事のことを指します。8月中旬の4日間をお盆期間とするのが一般的ですが、地域・慣習により7月に行うこともあります。中でも、特に故人が亡くなった後初めて迎えるお盆は「新盆(にいぼん)」または「初盆(はつぼん)」とも呼ばれ、自宅に僧侶を招いて法要を行うなど、通常のお盆行事よりも特に大切に考えられています。お盆期間にはお盆飾りやお供え物の準備をしたり、お仏壇や祖霊舎の掃除をしたりなど様々な過ごし方がありますが、特に多くの場合、お墓参りに行きお墓を掃除することが一般的と捉えられています。諸説ありますが、ご先祖様の霊(魂)を自宅に迎え入れるのと同時に、ご先祖様の肉体に会いに行く、という考えからお墓の前で手を合わせるという風にも考えられているようです。
なお、お盆は仏教由来の行事と思われがちですが、神道でもお盆行事を行います。神道のお盆も仏教と同じように7~8月に供物などを用意し、ご先祖様の霊をお迎えして祀ります。日本では、古くから信仰されていた神道の思想や慣習と、中国から伝来した仏教の思想が融合した行事も多くあります。また現代では特定の菩提寺を持たない人も多く、僧侶を呼ばない「無宗教」形式で行う葬儀も世の中に広まってきています。したがって昨今のお盆は宗教儀式としての側面よりも、忙しない日常の中で故人様やご先祖様を思い出し、向き合うための期間や慣習として行われていると考えられます。
散骨した人のお盆の過ごし方
故人の遺骨を海で供養する海洋散骨は、宗教色を持たない「無宗教」の形式で執り行われます。そのため、多くの場合四十九日や一周忌なども僧侶を招いて法要を執り行うことはせず、親族での会食や挨拶のみで済ませることが一般的です。したがって初盆に際しても、法要はもちろんお盆飾りや迎え火などは行わない家庭がほとんどと考えられます。また、海洋散骨では海洋上に遺骨を散布するため、その後にお墓参りをして墓石の前で手を合わせることや、再びご遺骨と対面することは叶いません。しかしながら、故人様を弔う手段として海洋散骨を選んだ人々にとっても、亡くなった人を想う気持ちの大きさは同じです。海洋散骨を終えた人々が故人を想う方法は様々ですが、以下のような例が挙げられます。
〇海のお墓参り「メモリアルクルーズ®」
散骨をした海へ船で訪れる、お参りのための専用クルーズ便を定期的に運航しています。海洋散骨を終えた後は「海洋散骨証明書」という散骨地点の緯度と経度が記された証明書が発行されるため、散骨を行ったのとまったく同じ地点を再び訪れることもできます。
メモリアルクルーズ®では船上からご遺骨を散布することはなく、参加者は生花を手向けたり、故人の好きだった音楽を流したり、思い思いの方法で海の上のお参りを行います。
〇散骨した海域周辺の海岸清掃
当社では「故人が眠る海をきれいに」を合言葉に掲げ、護岸や海岸の清掃活動を定期的に開催しています。参加者からは、海岸の清掃活動をすることで「故人のために何かしてあげたい」という気持ちを消化でき、達成感が感じられるとのコメントもあります。様々な理由で船に乗ることができない人がメモリアルクルーズ®の代わりとして参加するケースもあるようです。
〇手元供養
故人様の遺骨を自宅等の身近なところで供養する方法を「手元供養」といいます。当社で海洋散骨を行う人の4割程度が何らかの形で手元供養を残しており、遺骨の一部を容器やアクセサリーに納めるほか、遺骨そのものを加工し宝石にするなどの方法もあります。身近で常に故人様を感じられることから、兄弟でそれぞれ作成したり、遠方に住む遺族に渡したりなど、ライフスタイルを問わず故人をいつでも想うことのできる供養方法です。
経験者が語る、海洋散骨の魅力と散骨後の変化
今年7月15日(海の日)には、過去に大切な人を見送ったことがある海洋散骨の経験者をスピーカーとして招き、散骨検討中の人々へ体験談を語りながら模擬散骨を体験する特別な散骨体験クルーズを開催いたしました。その中で語られたエピソードの一部をご紹介いたします。
T.M様(女性・東京都在住)
「生前主人(故人)とよく話して決めた散骨でした。主人が一番気にしていたのはまだ小さな孫。コロナ禍に亡くなったため、最後まで孫に会わせることはできませんでした。散骨したら最後の別れになってしまうような気もしましたが、乗船した孫に「羽田に来た時。ディズニーに来た時。海の方を見るとおじいちゃんがいるからね。」とスタッフの方が声をかけてくれ、そのときにすごく心が楽になりました。こうして船で海に訪れると、私も主人にまた会いに来られたと嬉しく思います。もう少し孫が成長したら、次は船を貸切ってお参りに来たいと思っています。」
T.A様(男性・千葉県在住)
「娘しかいない私夫婦は、海洋散骨にしようと決めていました。しかし妻(故人)は聞いていた余命よりもかなり早く逝ってしまい、海洋散骨の遺志は決まっていたものの、どこの海がいいとか、彼女の希望は何も聞くことができませんでした。そんな時、ふとテレビで見かけた宮城県・松島の美しさに魅力に感じ、松島湾での海洋散骨に決めました。思い返せば、たった一度だけですが二人で訪れたことがある場所でした。
実際、海洋散骨で改めて訪れると、とてもきれいな場所で素晴らしい経験になりました。また11月に家族みんなでお参りに行く予定です。松島は、妻の出身地だとか、縁のある場所ということではありませんが、今回の散骨を通して私たち家族にとって特別な場所になりました。
余談ですが、旅行や家族の写真など、子供が大きくなると少なくなってきてしまうかもしれません。ですがいつに何が起こるかわからないです。旅行に行けるのは今だけです。私のように後悔しないでほしいので、ぜひ皆さん、ご家族との時間を大切になさってください。」
お二人とも、海洋散骨を行った結果、その海や周辺地域が特別な場所になったと語っていました。本来は毎日でも故人様を思い出し感謝することが一番の供養となるでしょう。しかし、日常の忙しなさに流されだんだんと故人様を想う時間が減ってしまうこともあります。お盆は海洋散骨を行った人々にとっても、故人様を思い出し向き合う為の期間です。当社では、遺族や関係者がいつでも亡くなった大切な人を思い出せるように、印象に残る場所選びやセレモニー体験を重要視し、一度きりの海洋散骨を提供しています。