散骨は川で行える?遺骨を撒けない場所と守るべきマナーを紹介

散骨は川で行える?遺骨を撒けない場所と守るべきマナーを紹介

2023/08/05

近年、お墓の後継者不足や葬送に対する価値観の変化などにより、散骨が注目されています。

特に、海へ散骨する「海洋散骨」は、メディアなどを通じてその存在が広く知れ渡ってきたことから、故人との別れのセレモニーとして選択する人が増えています。

しかし、仮に故人が海への散骨ではなく、故郷の川や思い入れのある川への散骨を希望した場合、川に散骨することは可能なのでしょうか。

その疑問を解消するために、本記事では「散骨が川で行えるのか」「散骨可能な場所」「守るべきマナー・ルール」について解説します。

散骨とは

2021年に厚生労働省が公表した「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」によると、散骨は以下のとおり定義されています。

墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為

(引用:散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)|厚生労働省

 

つまり、散骨とは「火葬後の遺骨をパウダー状にして、墓地や納骨堂などの施設に納めず、海や山、空などに撒く葬送方法」を意味する言葉といえます。

散骨の種類

「散骨は海や山、空などに撒く葬送方法」とお伝えしたとおり、散骨にはいくつか種類があります。

散骨の主な種類は以下の3つです。

・海洋散骨

・山林散骨

・宇宙散骨

ひとつずつ見ていきましょう。

海洋散骨

海洋散骨とは、祭祀の目的をもって、パウダー状にした遺骨を海に散布する供養方法です。

海は、自治体の規制や条例などが及ばず、誰の所有物でもないため、現在の日本においては最もトラブルの起こりにくい安全な散骨方法といえます。

ただし、海水浴場や漁場など、生活圏に近い場所での散骨はトラブルの原因になるため、注意が必要です。

山林散骨

山林散骨とは、パウダー状にした遺骨を山間部・森林部に散布する供養方法です。

私有地の山や森林での散骨であれば問題はありませんが、他人が所有する土地や水源地に近い場所での散骨はトラブルの原因となるため、注意しましょう。

宇宙散骨

宇宙散骨とは、パウダー状にした遺骨や遺灰を専用カプセルに納め、宇宙空間へ散骨する供養方法です。

専用カプセルをロケットに積み込み、宇宙のはるか遠くへ運ぶユニークな供養方法といえますが、他の散骨方法と比較すると認知度は高くありません。

宇宙散骨の費用相場は120万円程度です。プランによっては200万円を超える場合もあり、他の散骨方法と比べて費用が高くなる傾向にあります。

日本では川で散骨できない

散骨を直接禁止・規制する法律はないため、きちんと粉骨し、節度をもって行えば基本的にどの場所においても散骨可能です。ただし、故人の思い入れのある場所であっても、川での散骨は控える必要があります。

骨の主成分であるリン酸カルシウムは、水に溶けにくい性質を持っています。そのまま川に散骨すれば、成分が溶けないまま長い時間水中を浮遊することになります。日本の川は、生活用水のほか、幅広い用途に使われているため、水に骨の成分が混ざることを快く思わない方がいても不思議ではありません。

ほかにも、川へ散骨する様子を見た近隣住民が「宗教的感情を害された」として苦情を言ってくる可能性もあります。

このように、「生活用水への影響」や「近隣住民とのトラブル」といった理由から、川への散骨は避けたほうがよいでしょう。

その他の散骨ができない場所

川以外にも散骨できない場所があります。特に注意すべき場所は以下のとおりです。

・法令で禁止されている場所

・許可を受けていない私有地

・水源地や自然環境保全区域など

・公園や学校などの公共施設・敷地内

・観光エリアや漁業・養殖産業などの海域

ひとつずつ見ていきましょう。

法令で禁止されている場所

自治体の条例や各種法令で禁止されている場所では散骨できないため、注意しましょう。

一例として、全国の自治体には以下のような条例があります。

・北海道「長沼町さわやか環境づくり条例」:北海道長沼町では、墓地以外でのご遺骨の散布を禁止しています。

・埼玉県「秩父市環境保全条例」:埼玉県秩父市では、環境保全の観点から散骨場以外での散骨を禁止しています。

散骨を希望する場合は、散骨するエリアや地域で自治体の条例や各種法令による規制がないか、事前に確認することが大切です。

許可を受けていない私有地

他人が所有する私有地で、許可を得ずに散骨することは認められていません。

土地の所有者からすれば、自分の所有する土地や山に他人の遺骨を撒かれたら、良い気分にはならないでしょう。

また、仮に所有者から許可を得たとしても、近隣住民から宗教的感情の侵害や、農水産物への風評被害を理由とした損害賠償・慰謝料の請求が懸念されるため、十分な注意が求められます。

水源地や自然環境保全区域など

川や湖、ダムなどの生活用水の水源地、または自然環境保全区域も散骨禁止エリアとして覚えておきましょう。

自然環境保全区域とは、自然環境保全法や都道府県条例などにより、自然環境の保全を目的に指定された地域です。一例として、屋久島や白神山地などが該当します。

天然記念物や生態系などに影響を及ぼす可能性があるため、水源地や自然環境保全区域での散骨は避けましょう。

公園や学校などの公共施設・敷地内

公園や学校などの公共施設やその敷地内は、国や自治体などが管理しています。

公共施設・敷地は、不特定多数の人が利用します。散骨を見た第三者の宗教的感情を害する可能性が高いため、公共施設・敷地内での散骨は控えましょう。

観光エリアや漁業・養殖産業などの海域

海洋散骨は広く認知されていますが、「海ならどこでも散骨可能」というわけではありません。

特に、観光エリアやレジャー施設、漁業や養殖産業といった経済活動が行われている海域では風評被害の恐れがあるため、トラブルを防ぐ意味でも散骨は避けましょう。

散骨で守るべきマナーとルール

散骨自体を禁止する法律はありませんが、近隣住民や観光業・漁業関係者などとのトラブルを避けるため、散骨ではマナーとルールを遵守する必要があります。

ここからは、厚生労働省の「散骨に関するガイドライン」を参考に、遵守すべきマナーとルールを紹介します。

粉骨する

刑法第190条は、遺骨をそのまま遺棄することを禁止しています。

そのため海洋散骨では、遺骨を1mm〜2mm程度のパウダー状に細かく粉砕(粉骨)し、遺骨が遺骨であると判別できないようにする必要があります。

遺骨を砕かずにそのまま遺棄したり、遺骨と判別できるような大きさで散骨したりすると、たとえ遺族や親族に葬送目的があったとしても、それを見た近隣住民は「遺骨遺棄」と判断してしまうかもしれません。

また、パウダー状に砕くことで遺骨が外洋に流れやすく、自然に還りやすくなるというメリットもあります。

法の遵守や周辺環境・近隣住民への配慮を欠かさず、適切な方法で粉骨を行いましょう。

火気を持ち込まない

一般的に、故人を偲ぶ場面ではロウソクや線香などを使うイメージがありますが、海洋散骨ではそのような火気の持ち込みは厳禁です。

火気の持ち込みが厳禁とされる主な理由は、以下のとおりです。

・ロウソクや線香から出た化学物質や灰などが海に落ち、環境汚染につながるため

・クルーズ中に船上の物品や荷物に燃え移り、火災の危険性があるため

海洋散骨にかかわらず、多くの船舶・クルーザーでは、手荷物としての火気の持ち込みが禁止されています。持ち込みを希望する物品や備品などが火気に該当するかどうか、事前に確認しておきましょう。

副葬品は自然に還るものを選ぶ

副葬品とは、故人の愛用品や、遺された方から故人へ手向けるために一緒に埋葬する品々のことです。

海洋散骨では、遺骨と副葬品を一緒に海へ散布するため、自然に還るものだけを選ぶ必要があります。

次のような物は自然に還らないため、副葬品から除外しましょう。

・金属

・ガラス

・ビニール

・プラスチック

・その他の人工物

これら自然に還らないものを副葬品として散布すると、海洋汚染につながります。「どうしても副葬品を海に手向けたい」という場合は、自然に還るものを選びましょう。

散骨場所や周囲へ配慮する

海洋散骨を見た一部の近隣住民が不快に感じたり、観光業・漁業関係者への風評被害が及んだりする可能性もゼロではありません。トラブルを避けるためにも、周囲への配慮を忘れず海洋散骨を行う必要があります。

配慮すべきポイントは、主に以下の点です。

・服装:葬儀以外の目的で桟橋やマリーナなどを訪れる一般市民や近隣住民に配慮し、喪服は避け、平服で参列する

・時間帯:人の往来が多い朝夕の通勤・通学の時間帯、ランチタイムは避ける

・散骨場所:人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上のみで散骨する(避けるべきエリア:河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地、海岸・浜辺・防波堤、漁場・養殖場・航路、それらの近辺)

親族・遺族から許可を得る

親族・遺族のなかには「手元に置いて供養したい」「故人を近くに感じていたい」という方もいるかもしれません。

一度散骨した遺骨は二度と手元に戻りません。親族・遺族の合意を得ずにすべての遺骨を散骨してしまうと、「なぜ勝手なことをしたのか」と反感を買う可能性もあるでしょう。

トラブルに発展しないよう、事前に親族・遺族の間で十分に話し合い、散骨に対して了承を得ておくことが大切です。

近年は、散骨前に分骨し、ペンダントやアクセサリーに加工した遺骨を忘れ形見として身に着ける人も増えています。「どうしても手元に残したい」という親族・遺族がいる場合は、一度提案してみるとよいでしょう。

参考:納骨アクセサリー|株式会社ハウスボートクラブ

散骨をするなら海洋散骨がおすすめの理由

さまざまな供養方法があるなかで最もおすすめなのが、海洋散骨です。

ここからは、海洋散骨をおすすめする理由を詳しく紹介します。

費用を抑えられる

株式会社鎌倉新書の「お墓の消費者全国実態調査(2023年度)」によると、お墓の平均購入価格は、一般墓が152.4万円、樹木葬が66.9万円、納骨堂が77.6万円という結果でした。また、お墓を購入する場合、購入時の費用に加えて、年間管理料やメンテナンス費用なども追加で発生します。

一方、海洋散骨の一般的な費用相場は、チャーター散骨で20万円~40万円、合同散骨で10万円~20万円、代行散骨で5万円~10万円です。さらに、海洋散骨の場合、年間管理料や施行時以外のメンテナンス費用などが発生しません。

このように、海洋散骨では供養やメンテナンスに関する費用がかからないため、経済的な負担を大幅に軽減できるというメリットがあります。

参考:お墓の消費者全国実態調査(2023年度)|株式会社鎌倉新書

次世代に負担をかけない

海洋散骨を検討する方の多くが、「お墓の後継者がいない」「子・孫など次世代に負担をかけたくない」などの悩みをお持ちです。

お墓は後継者が維持管理する必要があり、管理費用の滞納が続けば「無縁墓」として強制撤去される可能性があります。

一方、海洋散骨の場合はお墓を作らないため、お墓の手入れや年間管理料の支払いが不要です。このように海洋散骨は、親族・遺族に負担のかからない方法といえるでしょう。

「散骨後も故人に手を合わせたい」という方には、一部の海洋散骨業者が実施しているメモリアルクルーズをおすすめします。メモリアルクルーズとは、年忌法要や特別な日などの節目に、散骨した海域を訪れるサービスのことです。大切な故人との思い出を振り返る機会として、検討してみるとよいでしょう。

地球環境への負荷が少ない

最近では、サステナビリティ(持続可能性)やエコロジー、SDGsなど地球環境問題を意識しながら生活する人も増えています。

供養・葬送方法も例外ではなく、地球環境により優しい方法を望む声が高まっています。野山を開発する霊園や、都会に建てられるビル型の納骨堂などは、必ずしも地球環境に優しいものとはいえません。

海洋散骨には、「自然から生まれた人間を自然の循環に還す」というコンセプトから始まった文化的背景があります。そのため、故人の尊厳を守りながら、地球環境への負荷が最も少ない方法として多くの人に選ばれています。

散骨はプロの業者に任せよう

マナーやルールを遵守し、節度をもって適切な方法・場所で散骨すれば問題ありませんが、個人や身内だけで行う散骨はトラブルを招く恐れがあります。

海洋散骨を希望する場合は、安易に個人で行わず、プロの散骨業者に依頼することをおすすめします。

散骨業者を利用するメリット

散骨では、粉骨やクルーズ船の手配、法令・条例を遵守した散骨エリアの選定などを行う必要があります。

これらを個人で行うのは大きな負担です。また、近隣住民や観光業、漁業関係者などへの配慮を欠くと、トラブルに発展する可能性も考えられます。

散骨業者は、散骨実施にあたっての手厚いサポートや適切なアドバイス、各種手配の代行などをしてくれるため、依頼することで大幅に負担を軽減できます。

悪徳業者には注意が必要

海洋散骨はプロの散骨業者へ依頼することが望ましいものの、悪徳業者には注意が必要です。

例えば、低価格を強調した業者や評判の良くない業者などは、悪徳業者の可能性があります。ルールやマナーを逸脱した散骨を実施されたり、あとから高額な追加料金を請求されたりするケースもあるため、ご注意ください。

優良な散骨業者を選ぶポイントとしては、以下の点があげられます。

・クチコミや評判がよい

・散骨実績が豊富である

・業界団体の加盟事業者である

・散骨証明書を発行してくれる

・希望する海、エリアで散骨できる

・業界ガイドラインを遵守している 

・サービス内容や費用面に納得できる

・親族・遺族に対するヒアリングが丁寧である

・海洋散骨アドバイザーのような有資格者がいる

これらのポイントを踏まえ、自分に合った散骨業者を選びましょう。

まとめ

本記事では、川での散骨を避けるべき理由や、散骨にあたって守るべきマナー・ルールが存在することについて解説してきました。

近隣住民とのトラブル防止や生活用水への影響などを考慮すると、川での散骨はおすすめできません。散骨するのであれば、海洋散骨がおすすめです。

ただし、海洋散骨にも守るべきマナーやルールが存在します。そのため、個人や身内だけでの散骨は避け、必ずプロの散骨業者に依頼しましょう。なかには悪徳業者もいるため、業界団体の加盟事業者や実績豊富なプロの海洋散骨業者への依頼がおすすめです。

ブルーオーシャンセレモニーは、日本海洋散骨協会の加盟事業者として長年活動する、プロの海洋散骨会社です。「故人との思い出がある海で散骨したい」「悔いの残らない散骨を行いたい」といったご要望にお応えできるよう、経験豊富なスタッフが全力で散骨をサポートします。

海洋散骨をご検討中の方は、気軽にブルーオーシャンセレモニーへご連絡ください。

 

【参考】

散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)|厚生労働省

長沼町さわやか環境づくり条例(第11条)|北海道長沼町

秩父市環境保全条例(第36条)|埼玉県秩父市

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