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遺族様インタビュー

お客様よりいただいたインタビューのご紹介です。

2022/09/26 伊藤 太乙様

「僕たち、夫婦のままでいい?」モノや形に縛られない“二人らしい”送り方

56歳という若さでこの世を去った奥様。北海道には奥様のご両親も健在でいらっしゃり、お互いの想いが交錯する中で、海洋散骨を実施する決め手になったのは奥様自身の強い意志でした。一人残された今、奥様の写真に毎日声をかけながら明るく前を向いて日常を送っている伊藤様に、海洋散骨に至るまでをインタビューをさせていただきました。

 

1.きっかけは、妻が海洋散骨を選んでくれたから。二人らしい、自然な感覚

長谷川)奥様が旅立ってから4か月と少し。海洋散骨を終えてから約2か月経ちました。
中々振り返るお時間もないとは思うのですが、今現在の伊藤様のお気持ちはいかがでしょうか。

 

伊藤様)散骨したその時、凄く爽快感がありました。海や空、自然に囲まれていたし、我々二人にとってストーリー性がある羽田空港が見える場所でしたので、メモリアルな時間でした。
私は実は、幼少の頃にお寺で生活していたことがあって。お手伝いでお墓を掃除している時に、雨の後は下が濡れていたり、骨壷が倒れて色さえ分からなくなっていたり。山の方のお寺だとそういうことは珍しくないんですよね。だから妻を入れる気は無かったです。海洋散骨で妻の遺骨は当然、海の中にさ~っと溶けるようにいったわけです。海にいるときは気が付かなかったのですが、散骨を終えて一人で電車に乗っている時に、妻が「船に乗って出ていった」ような感覚になりました。

 

長谷川)船旅に出るようなイメージですか?

 

伊藤様)そうですね。小さい頃に経験した精霊流しのイメージに近くて、凄く気持ちがスッキリしました。いまでも遺骨が置いてあった台は片づけられずにいますが、もしここに遺骨があったとしたら妻の想いを叶えられていない気持ちになっていたと思います。今は、散骨が終わり、自分の気持ちを消化できたというのと、妻の希望を達成することができたという二重の爽快感があってスッキリしています。

 

伊藤様)今(※インタビュー当時)丁度お盆ですが、コロナ禍もあり医療従事者という仕事柄、田舎にあるお寺にはお参りに行けなかったんです。お墓があると、お墓参りに行けないことに罪の意識が生まれてしまう気がして。妻は神式を好んでいたので私の自宅には祖霊社があります。そこで今、盆祭りをしているんですね。神道では50日を過ぎたら故人は家の守り神になります。半分あちらの世界に行きつつ、半分は祖霊社にいて家を守っているという感じでとても自然です。

 

長谷川)なるほど。仏式だと魂をお迎えに行かないといけないけれど、神式だと自宅に守り神としているので、お墓参りに行けなかった自分に対する罪の意識が軽減されるということですかね。

 

伊藤様)海洋散骨を経験していない方にはとても理解しにくいというのは承知していますが、散骨をして今は凄く自然で、妻をより身近に感じますし、新しい感覚です。また私だけでもし考えていたとしたら、悩んでしまって、まだ納骨すらしていないと思います。散骨をすることで区切りをしっかりつけることができたし、また何よりも妻が散骨を希望してくれたことに感謝です。

 

長谷川)奥様が強い意志を持っていてくれたからこそ、伊藤様も迷わずに新たな形で今の生活が送れているのですね。ご夫婦でしっかり話しておくということはとても大事になりますね。

 

伊藤様)妻が5年前に癌になってから本格的に話し合ってはいたのですが、実はその前から二人でお墓の話は意外としていたんですよね。最初の頃は気軽に「散骨がいいね」とか「あの山のところに行きたいよね」とか話していて。でも癌になって闘病してからは現実的に話すようになって。僕が「(奥様の出身地である)北海道の大好きだった山に連れていくよ?撒いてあげるよ?」って言ったら、そういった所ではなくてやっぱり海がいいと。「戻る場所としては海の印象が私のイメージに近い。海の方が有難い。山に散骨してもらっても海に辿り着くまでに時間が掛かるし海にスーッと溶かしてもらった方が自分のイメージにとても合うんだ」と言っていました。

 

 

ご遺骨が海に溶けるように広がっていく瞬間

 

長谷川)奥様の中では自分の最後をしっかりイメージされていたのですね。

 

伊藤様)していたと思います。また、僕の心情を先読みしていたのだと思います。出来れば執着をなくしてほしい、執着していると私も次の段階に行きにくいからと。神道はそういう部分が多いようで、祖霊社の中には基本的には遺影写真も飾らない。ただ神主さんに聞いたら、神道としての儀式はないというだけなので家族の気持ち優先で、仏式と同じようにお盆もお彼岸もやってもらっていいよと言われました。なので今年は迎え火を自分でしてみました。妻との写真はまだ片せない状況で、むしろどちらかと言えば増えていますが(笑)

 

長谷川)いきなり全部を無くすというのは中々難しいことですし、無理に片付けないで良いと思いますよ。

 

伊藤様)今は携帯用のパスケースに2人の写真を入れて持って歩いていまして。仕事のデスクに置いたり食事に行く時も一緒に持ち歩いたりしています。店員さんも妻のことをよく知っている方なのでカウンターに置かせてもらって、一杯頂いたり。
なので【心】と言う意味では、遺骨が家・お墓にあるよりも自分らしい、二人らしい感じがあり今の方が自然です。振り返って、もし海洋散骨をしていなかったら今のこの心境はないなと思います。

 

長谷川)執着を無くすというのはとても意味があることなのですね。

 

伊藤様)そうです。ただ僕の最後の一つのお願いとして「僕たち、夫婦のままでいいか?」と聞いた時に10分くらい考えて、『うん。いいよ』って言ってくれたんですが、本当は、妻にとってはそれも執着になるから辞めてほしかったと思うんです。でも多分僕が一人になった時の心境を考えて許可してくれたので、僕の中では今でも夫婦なんです。何なら前よりも夫婦な気がします。前よりも一人会話しています!食事しながら声を掛けていますよ。なので、あそこ(元々遺骨が置いてあった台)にまだ遺骨があったらその方が不自然ですね。僕の友人も昔奥様を亡くされていて、『未だにバーチャルデートしているよ!』ってアドバイスしてくれて「あ~!その手があったか!」と思って。今はバーチャル夫婦みたいな感じで、友人のアドバイス以降、妻の写真を持ち歩いて「ここ好きな街だったよね」って街の景色を見せて楽しんでいます。もし遺骨が家やお墓にあったらこういう自由な発想ができなかったと思います。散骨して海に溶けていつかそれが水蒸気になって雲にあがって、その循環の中に戻りたいと妻が言っていたので、どこの街に行っても空があっていつでも会えるような感じ。これがお墓に入ってしまうと僕の中でのイメージとはちょっと違うものになっているのかと。とても自然な形にはなれなかったなと思います。

 

長谷川)確かにお墓だとそこに行かないといけないというのは、行けなかった時に自分自身も苦しくなりますよね。伊藤様ご夫婦としてはお墓であることは不自然なのかもしれないですね。散骨をした後だからこそ、実感として沸いてきているのですね。

 

長谷川)奥様に『手元に遺骨は残さないでね』と言われていたと思うのですが、伊藤様としては残したい想いはありませんでしたか?

 

伊藤様)妻が許せば間違いなく残していました。遺骨の一部をペンダントや何かに残す形はいいと思います。僕もそのつもりでしたし。ただ、僕は妻が望まなかったので手元供養という形ではなく、写真を持ち歩いています。

 

 

2.妻の両親に認めてもらえたこと、周囲の反応が前向きにさせてくれる

長谷川)北海道にいらっしゃる奥様のご両親は散骨に対してあまり前向きではなかったかと思いますが、散骨を終えて今はどんなご様子ですか?

 

伊藤様)散骨証明書と一緒に散骨の様子の写真を何枚かお送りしたんですが、とても喜んでもらって「あらいいわね」ってお義母さんは言ってくれて。お義父さんは「いや~海まで出ていってくれてありがとう。ご苦労様」って言ってくれて。分骨云々の話は、『本人が望んでいないのでそれは出来ない』と正直にお伝えしたらそれ以上は何も言わずに。
散骨の日は「これから行くのね」ってお義母さんから電話を貰いました。「帰ってきたら電話頂戴」って。「海は暑かったんでしょ?脱水にならなかった?」って心配してくれて。何枚か写真を送ったのですが、電話で「見たわよ~!私には感覚は分からないけれど、なんかいいわね!」と言ってくれました。

 

長谷川)いいわねと言われたのは素直に嬉しいですね。

 

伊藤様)嬉しかったですね!

 

伊藤様)第一声が「どう?やって良かった?」だったんですよね。
僕が落ち込んだ時も妻のお母様とよく会話をしていてとても寄り添ってくれて。だからこそ終わった時に「スッキリした?」って僕に聞いてもらった時にその言葉自体がスッキリしました。そしてまた、これが納骨だったらどうだったんだろうっていつも考えるんですよね。
また、散骨証明書や当日の写真を送ったことで義理の母の中で現実化したようです。「こっち(北海道)の海でやるとしたら冬は無理ね。」なんて言っていたりしたので。もしかしたら、自分達も何かを考えているのかなと。お墓に入れるにしてもそうでないにしても、一つの選択肢として海洋散骨を考えているのではないかと思います。

 

長谷川)海洋散骨はまだあまり知られておらず、間違ったイメージがあることも事実なので、実際の写真をみることで予想以上に「良い」イメージに繋がったんだと思います。

 

伊藤様)仰る通りです。自分でも自分が散骨している表情を見てこんな顔していたんだって。
自分自身がとても楽しそうな顔をしていて、爽快感と自分の表情がマッチングしていて。あの写真を見てそう思いました。あんな顔しているとは思わなかったです。もっとシビアな顔をしていると思っていました。

 

 

 

マスク越しでも分かる笑顔

 

 

長谷川)いい表情で散骨されていましたよ!

 

伊藤様)本当ですか?

 

長谷川)はい!奥様のご両親に海洋散骨は思うより悪くない、むしろいいかもしれないと思っていただけたのは我々としても有難い結果で、とても嬉しいことです。

 

伊藤様)私の母は都内に住んでいて今回散骨をすると伝えたら、「私は長野の山だもんな~。」って言っていました。出航前に乗船する船の写真を送ったら「そんな素敵な船で行くの??いいな~」って言っていました。あと、デザイナーさんが作ってくれた祭壇の写真も見せたら「ま~!えいりちゃんらしくていいわね~。」って。私の母なんかは東京江戸前育ちなので散骨にとても興味を持っていて。

 

 

 

奥様をイメージして作成したオリジナル生花。祭壇の前にお席を作りました。

 

 

長谷川)お母様も散骨に興味を持っていただいたのですね。自分達が選択したことをそういう風に言ってもらえるのはとても嬉しいですね。
身内や身近な方で散骨を体験している人がは少ないので、とても貴重なんですよね。

 

伊藤様)都心部の方が需要はある気がします。職場でもどこで聞いたのかは分かりませんが「奥様散骨したんですか?」って。遺骨が海に溶けていく様子を見せたら「あ、きれ~」って言っていました。「もし何かあったら教えてください!」なんて言っていて私も「あ、いいよ、いいよ~!」って。

 

長谷川)納骨ではそういう体験は得られないですよね。伊藤様の周りだけでもそれだけ影響があるというのは、やはり少なくとも散骨というものに興味があるという表れですね。

 

伊藤様)職場の朝礼で無事に散骨を終えたことを報告したらみんなに声を掛けてもらって「脱水とか大丈夫でした?」「羽田のどの辺ですか?」とか、何かみんな海の人になっていました。あれ?みんな疑似体験してる!なんて思いました。納骨だったらそんな会話はなかったなと思いますね。部下が凄く話し掛けてくれて、意外と食いついてきたので・・・

 

長谷川)周りの反応のおかげで変に落ち込み過ぎず、むしろ前よりハッピーな生活にしてくれていますよね。

 

伊藤様)そうですね。妻にはこの選択をしてくれてありがとう。しかないですね。

 

 

3.大好きな音楽に包まれて

長谷川)また今回、チャーター散骨で実施しましたが、お問合せ当初は合同散骨をご希望でしたよね。最終的にお打合せでチャーター散骨に変更しましたが実際どうでしたか?

 

伊藤様)最初はグループで行く話しでしたよね。僕も散骨は初めてだし、本当に散骨できるのかな?(気持ち的な部分で)とか思って、でも皆さんと一緒なら流れに乗れるし順番が来ればやらないといけないので、その方がメンタル面でのメリットがあったんですよね。でも、チャーター散骨なら好きな音楽を流せると提案いただいて、それでチャーター散骨に変更しました。在宅治療にしてからずっと聞いていた好きなチェロの音楽を流してもらって「あ~チャーターにして良かったな~」と思いました。

 

長谷川)なるほど。自分の好きな音楽を流せるのはチャーター散骨の魅力ですね。伊藤様にはチャーター散骨にしていただいて本当に良かったと我々も思っています。これが合同散骨だったらもしかしたら違う気持ちだったかもしれないので・・・

 

伊藤様)もし、音楽を流すことでチャーター金額が上がったとしても払っていたと思います。それくらい自分にとって思入れのある音楽で、大切なので流せるというのはとても大きいです。今後、好きな音楽を流せると聞いたらチャーター散骨を選ぶ方は多いんじゃないかなと思いますよ。勿論、合同散骨もいいでしょうし代行散骨もいいと思います。ただ、音楽以外でも何か他のツールでオリジナルに出来ることがあるのであればチャーター散骨を選ぶ方も増えるのではないかと思います。

 

 

 

チェロの音色を聴きながら散骨ポイントへ向かう途中

 

長谷川)そうですね。好きな音楽がある方には是非、伊藤様の事例をお伝えさせていただきますね。今日はお忙しいところありがとうございました。

長谷川
散骨当日以来、お久し振りにお会いした伊藤様ですが笑顔溢れる姿がとても印象的でした。
「散骨をして良かった」というのは経験しなければ分からないことではありますが、【自分達らしさ】を感じられるかどうかがキーになってくるのだと思います。
形にこだわらないからこそ、どんな風に気持ちを消化し、今後の供養をしていくのかが重要になります。
伊藤様は奥様との約束を果たしつつ、自分なりの方法で気持ちの整理ができているからこそ、笑顔で前向きに過ごされているのだと思います。
「色々な考え方があっていい」というのも海洋散骨の魅力の一つですね。

長谷川

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