散骨を扱ったロードムービー「あなたへ」(高倉健主演)を観ました

2012/09/03

9月に入り、朝晩が多少過ごしやすくなってきましたね。

8月末から、映画「あなたへ」がいよいよ公開されました。
高倉健が6年ぶりに映画に出演すること、ビートたけし、草なぎ剛、佐藤浩一、浅野忠信、綾瀬はるか、田中裕子などなどキャストが豪華なこと、映画のテーマのひとつが「散骨」であること、といったことで、夏前から(私たちのまわりでは)随分話題になっていました。

昨日、やっと半日休みが取れたので映画を観に行ってきました。

公開される前から気になっていたのは、誰が散骨を監修したのだろう?ということでした。

アカデミー賞を受賞した「おくりびと」をはじめ、映画やドラマで葬送を扱うときには、どこかしら専門家が監修に入っていることが多いので、今回も散骨を多く取り扱っている同業者が散骨シーンの監修をしているのだろうか、と思っていました。
しかし、実際に映画を観たところ、監修をしている業者というのは、特にないということが分かりました。
それは、遺骨を2mm以下に粉砕する、花束を包むラッピングなど自然に還らないものははずしておく、といった自主ルールが採用されていなかったからです。
そういう細かいところに目がいってしまうのは職業病ですが、これまで「マディソン郡の橋」「男たちの大和」「世界の中心で愛をさけぶ」など、ストーリーの一部に散骨シーンが含まれる映画はありましたが、ストーリー全体の目的が散骨、という映画は初めてなので、人々への影響力が強いと思い、つい注目してしまいました。
この映画を観て、「私も散骨がいい」という人が増えるかどうかは分かりませんが、違法なので出来ないと思っている人たちへ、こういう選択肢もあるということを知ってもらう一定の効果はあるのではないかと思います。

「こういう選択肢もある」です。
この世の中には、いろいろな考え方、価値観、いろいろな人生やそれぞれの事情を抱えている人たちがいます。
映画の登場人物たちを通して、そんなことが伝わってきました。
晩婚で子供がいないまま妻に先立たれた主人公。
妻が夫に遺した「想い」。
なぜ?という気持ちを抱えながらも、散骨によって現れた心境の変化。
長塚京三が「俺は嫌だよ、散骨なんて。墓が無いなんて寂しすぎる」というセリフがありますが、そういう考え方の人も、もちろんいるでしょう。
また、「何か言われて問題になると困るんで・・・」と、散骨の船を出すことを漁協に断られるシーンがありますが、そういった漁師たちの声にも耳を傾ける必要があるでしょう。
この夏に読んだ、「墓と葬送の現在」森謙二 著(東京堂出版)という本に書いてあったことですが、散骨は、「撒かれる人(故人)」「撒く人(遺族)」「撒く場所の周辺にいる人」の3者の合意が重要です。

「撒かれる人」と「撒く人」の合意は、やはり生前からのコミュニケーションが重要。

この映画を観て思ったのは、心と心が通じ合っている夫婦なら、長く語らなくても、あんな一言の遺書でも想いは伝わるのかなぁ?ということです。

そして、「撒かれる場所の周辺にいる人」との合意。これは、散骨という葬法を選択するときに、気を付けておくべきことです。
現在の日本の法律では、遺骨を細かくして海に撒いても罰せられることはありませんが、民事訴訟につながるトラブルが起こることは十分考えられます。
「自分は死んだら海に還りたい」「故人のその想いを尊重してあげたい」その気持ちを理解してもらえない、ということはまずないと思います。
しかし、漁業が盛んな場所、海水浴場の近く、水源である湖を避けるなど、その周りにいる人たちへの配慮は必要でしょう。
来月の初旬に、全国で海洋散骨を施行している業者の方々に集まっていただき、散骨における統一したガイドライン作りなどを話し合う「第一回海洋葬サミット」を開催します。これだけ関心とニーズが高まっている散骨の実態は、一体どのようになっているのか?それを把握し伝えていくことも私たちの使命だと思っています。

最後に、この映画で私が一番衝撃を受けたのは、主人公を演じた高倉健が81歳だという事実です。
80を超えたら、「危ないから」と家族に免許証を取り上げられる人も少なくないと思いますが、自らキャンピングカーを運転して富山から長崎まで旅をするロードムービーで60代前半の役を演じる健さん、カッコイイです!!

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